山麓園太郎です。サワディーカップ。
タイポップスを紹介し始めたのがそもそもラジオ放送を通じてだったので、やはりラジオ出演には特別な気持ちをいつも持っています。先日は東京・渋谷クロスFMの音楽番組「TOKYO add 9」(88.5MHz 第3・第5火曜 夜9時~)にゲストで呼んで頂きました。
ハチ公口からタワレコへ向かって坂を上り、タワレコの少し先にある立派なオープンスタジオです。音声放送だけでなく、生放送の様子を公式サイトから映像でも見られるのはいいですね!
さてこの日の(2020年6月30日)放送ですが、タイポップス特集となるとつい肩に力が入っちゃう僕は、いつものように放送時間に収まるはずがない分量のテキストを用意してしまい(笑)、案の定こぼれたのでこのブログで完全版を公開します。
まず1曲目がタイのアイドルグループFEVER。日本のラジオ番組でこれほど詳しくグループについて紹介するのは初めてのことでもあり、タイ本国でもスタッフやメンバーが放送についてSNSで拡散してくれました。タイのFEVERファンにも生放送が届いたというわけです。自身もシンガーとして活躍する番組MCのDiueさんも僕が事前に送った音源を聴いて楽曲のクオリティの高さに驚き、FEVERファンになってしまったそう。僕、Diueさん、そしてタイのFEVERファンとメンバー本人がFEVER愛を共有する素敵な時間となりました。
FEVER
2018年結成のタイのアイドルグループ。メンバーは12人。BNK48の人気にあやかろうと日本式「カワイイ」系アイドルが多数デビューする中、クールなエレクトロポップ「Start Again」でデビューすると、そのビジュアルイメージから「タイの欅坂46」と呼ばれる。以降も「萌え」とは無縁なシティポップ路線の楽曲、PerfumeやMichael Jacksonに通じる複雑高度な振り付けをステージで繰り広げ「ライブ中ファンが一切ミックスを打たず、曲に聴き入る」という不文律が出来上がり、アイドルファンだけでなく幅広い音楽ファンの支持を得る。一方マーチャンダイズ面では2ショット撮影や多種のグッズ販売等、日本式アイドルのスタイルを取り入れている。
FEVERのプロデューサーにインタビュー by 山麓園太郎 (2020.06.16)
Q1: FEVERのメンバーに日本に来たことがある子はいますか?
A1: 12人のうちBeambeam、Beam、Baimon、Cee、Spam、Froy、Popの7人です。
(注:タイのラジオ番組でメンバーが自分の好きな曲をかける企画に出演した際に、Baimonがamazarashi、Ceeがゲーム「デビルメイクライ5」のサントラ、Froyが乃木坂46と欅坂46をチョイスした他、来日経験はないもののBaifernが中原めいこと竹内まりやをチョイスする等、日本の音楽やゲーム、アニメに親しんでいるメンバーは多いようです)
Q2: 音楽制作チームは皆さんタイポップス界で活躍中のバンドメンバーで、それぞれが別の音楽レーベルに所属しています。何故レーベルの壁を越えて自由にFEVERのプロジェクトに関われるのでしょう?日本の音楽業界ではあまり例がない事です。
A2: 彼らは全員音楽制作チームのボス、Chalerm(Gym And Swim)の友人です。彼らはこれまでにもPhum Viphrit、Oat Pramote、STAMPといった他のアーティストに詞や曲を提供しています。つまりアーティストとしてではなく職業作曲家として関わっている訳ですね。素晴らしいチームです。
(注:との答えですが、TELEx TELEXsのAomがヴォーカルトレーナーも務めたり、アレンジやレコーディングでの演奏にもPlastic Plastic、mamakiss、FOLK9といったバンドのメンバーが関わっています。逆に考えると、タイのレーベルには日本のような「うちの所属アーティストは勝手に他所で使わせないよ」という囲い込み意識がもともとないのでは?それにしても、「楽曲で勝負しよう!タイのアイドル界を僕達が変えよう!」というこのチームには、アイドルだったPerfumeをテクノポップユニットに変えた中田ヤスタカや、80年代の松田聖子への楽曲提供で歌謡曲を大人のポップスに変えていった細野晴臣、ユーミンに通じるものを感じます)
Q3: FEVERを結成する際、ロールモデルとなったものは何かありますか?つまり、参考にした日本のアイドルやJ-POP、その他のショービズにおけるビジネスモデルですが。
A3: 特に参考にしたものはありません。何かこれまでとは違うものを作ろうとしただけです。その上で得たものをアイドルと組み合わせてみた結果です。しかし多くの人がFEVERと欅坂46は似ている、と言いますね。
(注:結成直後のアーティスト写真やデビュー曲の衣装は確かに「坂道グループ」との類似点を感じるものでした。しかしその後FEVERは楽曲でも衣装でも「他の何にも似ていない」確固たる個性を築き上げてゆくことになります)
Q4:「FEVERの未来」について教えてください。
A4: 計画していることは沢山あります。次のシングルは多分もっと違う音楽を取り入れたものになるでしょう。FEVERが去年の私の予想を遥かに超えて成長したことをとても嬉しく思います。タイ以外の様々な国でもファンが生まれ、認められているのは素晴らしいことです。そんな海外ファンにも手を差し伸べ、FEVERと交流できるための方法を考えています。
(注:いつか来日公演が実現したり、ファングッズやCD等の通販が日本からも出来るようになったら嬉しいですね!)
そして番組では「Stop!」をオンエアしました。
この曲はメンバー12人を6人ずつに分けてリリースされたスプリット企画でした。もう1曲「NGLMD」のMusic Videoはこちら。
実際のステージの様子がこちら。1曲目「Ghost World」の振り付けは特に驚きです。Perfume好きな人はFEVERにもハマるんじゃないかな。
TWICE等のK-POP勢を除けば、海外のアイドルで日本で活動したり名前を知られているのはBNK48を始めとするAKBの海外姉妹グループしかいない現状で、次に日本に進出する可能性がある海外アイドルの最有力候補がFEVERだと僕は確信しています。もしも本当に来日が実現したら、ゲストで番組に生出演してもらおう!と打ち合わせの席で盛り上がったことを告白しておきます。
12人のメンバーにそれぞれ魅力がありますので、ぜひメンバーのインスタグラムをフォローしてみてください。一番の日本好きで部屋に漫画やレコードやミニ四駆までコレクションし、ストーリーになんと「ブルーライトヨコハマ」のカバーを投稿したこともあるBaifern(@baifern.feverth)、文化服装学院タイ校出身のファッショニスタで坂道系の写真集のような大人っぽい表情の投稿が多いBeam(@beam.feverth)、演奏動画も投稿しているベース女子Ply(@ply.feverth)、兼業しているタイスマイル航空のCA姿も麗しいBeamBeam(@beambeam.feverth)の4人からまずはいかがでしょうか。あ、もちろんFEVER公式(@feverthailand)も!
続いて「タイの屋台で買う朝ご飯が安くて美味しい」等、タイの食べ物の話題で盛り上がった後、2曲目のNumchaの紹介です。
Numcha
Numchaはタイ・バンコクのシンガーソングライター。大学の音楽科でヴォーカルを学び、今年1月「Keep Cold(冷たい返事)」でデビュー。このデビュー曲を藤原ヒロシさんがJ-WAVEの「JUN THE CULTURE」で紹介するなど、密かに日本でも注目している人が多い模様。今回オンエアする「Dirty Shoes」は新人なのに風格が漂う声で歌われるシティポップ調のナンバー。現地ラジオ局のヒットチャート上位にランクイン。「激しい雨はキミの汚れた靴をキレイにしてくれるかもね」という歌詞は今の僕たちに前向きなメッセージとして刺さります。
Numchaインタビュー by 山麓園太郎(2020.06.10)
Q1: 日本に来たことはありますか?
A1: はい、何度も旅行に行ったことがあります。私の一番の思い出は「人」です。日本人はとても親切で、謙虚で、快活ですね。英語が話せる人と会話しましたが、とても楽しかったです。人以外では、2年前に行った日光が大好きです。とても静かな場所で、本当に安らぎを感じました。時々「またあそこに戻りたいなぁ」と考えますよ。自然に囲まれた暮らしって、超イケてますよね!
Q2: この番組(Tokyo add9)は渋谷の中心から放送されています。渋谷という街についてどう思いますか?
A2: 美しい場所ですね。スクランブル交差点の賑わいもいいし、夜歩くのも大好きです。活気にあふれているから気分がいいし。日本に旅行する時は必ず渋谷に行ってます。買い物が好きだから(笑)。
Q3: もし番組リスナーがいつかタイへ旅行に行ったら、Numchaがオススメしたいタイのいい所は何ですか?
A3: 断然「タイ料理」ですねー!本当に美味しい!ご存じのように日本の人にはスパイシーだと思うけど、その辛さがポイントなんです。トムヤムクンやパッタイ、ソムタムなんかは有名ですが、私のオススメは「ガパオ」です。もしメニューにあれば豚肉を使った「ガパオムー」を食べるといいですよ。何を食べるか迷った時はいつもこれ。ナイトマーケットや屋台やレストランできっと見つかるから、ぜひ食べてみてください。
(注)ガパオは日本でもよく知られるようになり、各社から「ガパオの素」が発売されています。鶏肉を使って作るのが多いんですが、Numchaいわく「ガパオは鶏肉より豚肉の方が美味しい」そうです。
Q4: 音楽の事も訊かなきゃ。最も影響を受けたミュージシャンは誰ですか?
A4: インスピレーションを与えてくれた人は沢山いるけど、一番影響を受けたのはイギリスのTom Misch(トム・ミッシュ)です。いつも素晴らしい作品を作っていて、とってもユニークでキャッチーです。彼の音楽を聴いているとあんまり良過ぎて「もっと!もっと!」ってなります。それ以外にも台湾の落日飛車(Sunset Rollercoaster)や、Rex Orange County(イギリス)、Jacob Ogawa、Boy Pablo(どちらもノルウェー)、Phum Viphurit(タイ)が大好きです。
Numchaからリスナーへのメッセージ:
私の歌を聴いてくれてありがとう。そして私の歌を日本に紹介してくれた渋谷クロスFMに感謝します。いつか日本でライブがしたいと思います!それまで・・・コロナに気を付けて元気でいてください!Numchaでした!
最後に告知タイムを頂いたのでCyndi Seuiのベストアルバム「ベスト・オブ・シンディ・スイ」を紹介させてもらいました。
電子楽器を多用した当時最先端のサウンドで、2000年代にタイポップス界に大きな影響を与えた音楽家/プロデューサー。彼の15年に及ぶキャリアから僕たちが企画・選曲した初のベスト盤CD「ベスト・オブ・シンディ・スイ」が好評発売中。(コロナで経済が大きく打撃を受けている今、CDで買ってもらうことでアーティストだけでなくCDショップさん、配送の業者さん、色んな人にお金が回ります。)
全国のCDショップやAmazonでぜひ。
ところで、このCDでは音楽ブログ「アジアン・ポップ・パラダイス!」を運営していたfukuさんが素晴らしいライナーノートを執筆してくれましたが、CD発売直後の今年4月に急逝され、結果として彼の最後の仕事となってしまったため、この日の放送でCDを紹介したのはその裏に追悼の意味も込めていました。
僕にとっては師匠であり、タイの音楽だけではなく文化や暮らし、台湾の音楽シーン等についても豊富な体験に基づいた確かな情報を発信し続けた偉大な方でした。
僕の過去記事に残る彼のブログへのリンクは既に閲覧できなくなってしまっていますが、今はまだ記事を書き直す気になれずにいます。
当時のタイ音楽シーンを振り返った彼の生前最後の文章が読めるのはこのCDだけです。ぜひ実物を手に取ってシンディ・スイの音楽と共に読んで頂けたら嬉しいです。
番組では僕の得意分野であるシティポップとアイドルをご紹介しましたが、これらはタイの首都バンコクを中心とする限定的エリアでの流行歌であり、タイの音楽のごく一部に過ぎません。タイの音楽シーンにはロックもジャズもヒップホップもレゲエもあり、それを取り巻くようにルークトゥンやモーラム、イサーン音楽の広大な世界が広がっています。そのどれもが素晴らしく、日本人には新鮮に感じられるものです。
僕は「わ、なんか面白そう」って言ってドア開けて覗いて、そのままどっか行っちゃうような人なので(笑)、どうぞ開けっ放したドアから入って皆さんがそれぞれ自由にYouTubeやSpotifyを使ってタイ音楽の世界を探検してくれたらいいなと思っています。
以上、ドア開けるのだけは得意な山麓園太郎が渋谷からお伝えしました!
番組MC、DiueさんのCDも発売中です。
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