山麓園太郎です。サワディーカップ。
僕を含めて、ずっと後になってこの記事を見た人誰もが「あぁ、あの時は本当に大変だったよねぇ」と言えたらいいなぁ。と思いながら、コロナウイルスを避けて自宅にいる時間を増やしております。しかしそうすると外食とかライブハウスとか僕にとって「いつものこと」が日常から消えてしまってるわけで、お世話になっている飲食関係・音楽関係の皆様、持ちこたえてくれさえすれば必ずや後日この分を取り戻す勢いで伺うつもりです。ちなみに僕のマスク在庫はあと8枚です。
今日は新しめなものを中心に、自宅で過ごすBGMとしてのタイポップスをご紹介します。読書や自宅作業の邪魔にならぬよう、でも後半は少し気分が晴れるように。14曲・ちょうど1時間程の異国の音楽集。簡単な解説と共にお楽しみ頂ければ幸いです。
1:Waii 「FIERCE」
Waiiは2008年に15歳でデビュー。大手レーベルKamikazeに所属していた2010年代には「Playgirl」という大ヒットアルバムがあります。この曲はたぶん5年振りの新曲ですが、歌手以外にもインスタグラマーとしての人気が高い彼女、公開した日にいきなり100万回再生を達成しています。
MVの舞台は病院です。あえて世界の深刻な状況を想起させるものを1曲目に置きました。今僕たちは都市の中で孤立しているわけで、いきなりリゾート地や癒し系の画像かなんか見たところで「頑張ろう」なんて思えるはずがありませんから。このリストの前半は「孤立」をテーマにした楽曲で構成されています。次の曲行きましょう。
2:mute. 「Wait (da dee da)」
この曲でデビューしたばかり。ギターの弾き方がストローク(かき鳴らし)ではなく弦をつまんで弾くスタイルだし、コードの押さえ方を見てもジャズ系のバックグラウンドがありそうです。ヘッドフォンで聴くとハイハットが細かく左右にパンニングしていて、ヴォーカルやギターは深い残響と共に両サイドへ広げられています。歌詞の中に「私がここにいる理由がわからない」という一節がありますが、MVに登場する女性の胸の内と、そんな彼女をいつも決まった席で受け止める「悲しいけれど、居場所。」としての店の優しさが音響でも表現されている、印象的なMVです。
どんなアーティストなのか気になったので本人に直接質問してみました。mute.ありがとう!
山麓:デビュー前のことについて教えてくれますか?
mute.:この曲をリリースする前に、沢山の音楽を聴いてインプットを増やそうとしていました。大学でポピュラー音楽(ヴォーカル科)を専攻しています。幸運なことに、この曲のプロデューサーであるBangpunにも出会うことができました。音楽の趣味が一緒だったんです。
山麓:特に影響を受けたミュージシャンは?
mute.:今のところ、Se So Neon(セソニョン。韓国のインディーロックバンド)、Sweet William(鍵盤の使い方が超クールな日本のトラックメイカー)、青葉市子(シンガーソングライター)だと思います。大好きです!
山麓:この曲では人気バンドThe richman toyのNgoahさんと歌詞を共作していますね。もし将来アルバムをリリースするとしたら、彼らと同じsmallroomレーベルからになるんでしょうか?
mute.:彼は歌詞の書く時の方向性を示し、手伝ってくれました。まだどのレーベルを選ぶかは決めていません。今はこうして自分自身での創作活動を楽しんでいます。それにまだまだ勉強中ですから!
デビュー曲でこのクオリティ、そして「まだ勉強中です」という彼女。これからの活動が凄く楽しみです!
3:Lula「一緒にいるけど」
僕のように趣味まっしぐらで人生の大半を過ごしてきた男性にはちょっと気まずいMV(笑)。「あなたがまだ私を愛してるなら、私の心のケアもして欲しい。手遅れになる前に・・・。愛はいつまでも同じままじゃないの」。記念日やデートがおざなりになって「釣った魚に餌をあげない」みたいな弾劾を受けて捨てられる事態は避けたいものですね。ちなみにこの曲のアレンジと打ち込み、キーボードとバックコーラスを担当してるのはTELEx TELEXsのPew君です。
4:ATOM「enough」
で、その捨てられた男の末路・・・かと思わせて、こっちは実は悪女に振り回されてとうとう別れを決意した男の物語。オクターバー(1オクターブ低い音を生成する機械)を使った、過剰なほどにヘビーなイントロから彼の強い決意が伺えます。でもラストで着信があるとやっぱり10秒間逡巡しちゃうのね(笑)。
5:Jan Chan「Feel Alone」
普通こんな美人で性格もいい女の子と付き合ったとしたら、絶対別れるはずがない!と思いますけど、これMV見ると、もしかしたら永遠の別れの後のストーリーなのかもしれないんですよね。その時から時間が止まってしまったというね。彼女の透き通った歌声が涙を誘いますね。
6:PAAM「imagine」
歌手・女優・モデルとして活躍するPAAM。2013~2016年にかけては「GAIA」という、K-POPの影響が強い女性5人のダンスアイドルの一員でした。でもこういう落ち着いたナンバーも似合います。「誰かを想って眠れない夜」。良い声です!
7:Jib BNK48「It’s me」
この曲でリスト前半は終了。アイドルという予備知識を一旦忘れて、チル曲として聴いて欲しいと思うんですが。彼女はBNK48の中でも屈指の歌唱力ではありますが、それにしてもここまで音数の少ないチルアウトトラックをアイドル映画のサントラに使うタイという国が凄すぎ。
8:Evil Dude「Wasted Life」
この曲からはOASISとか90年代UKロックの匂いがするのでメンバーに訊いてみたら、これは以前在籍していたメンバーが書いた曲で、ダイナソーJr.やYuck、そしてもっと遡ってペット・ショップ・ボーイズやDuran Duranに影響を受けていたそうです。その後「もっと親しみやすい曲も」ってことで紅一点のヴォーカリストMoがよりポップなラブソングも書くようになった、と。
このEvil DudeのEPには前メンバー作の「High On Wheel」「Wasted Life」「Sea Foam Blues」とヴォーカリストMo作の ” 寝室に閉じこもって目覚まし時計のスヌーズボタンを押し続ける “という失恋の歌「SNOOZE」と、ハッピーなラブソング「17」の計5曲が収録。男女で作曲のキーの高さも違うため、Mo のヴォーカリストとしての表情も含めてそれぞれの作風の違いが際立ちながら、全体としてはティーンエイジャーの日常から生まれる物語にフォーカスした「バンコクの若者の現在」がうかがい知れる佳作になっています。
9:quicksand bed「That’s Why」
サビのコーラスワークが素敵なラブソング。この曲はバーでかかるようなタイプではないけど、気になる誰かと乾杯するのに良いBGMですね。皆さんもご自宅でいかがですか?僕の自宅には残念ながらこういうカクテルグラスがないですけど。
10:Numcha「Dirty Shoes」
彼女も2020年1月にデビューしたばかり。これが2ndシングルですが、ひょっとしたら近々バンコク中を席巻するヒット・メイカーになるかも。凄くシティ・ポップを研究してる上にジャズの素養もあるみたいで、ギターがジャズでしか使わないような和音と音階をさりげなくぶっこんできます。MVでは3枚目キャラを演じてるけど何気にダンス上手いし!大学の音楽科でヴォーカル専攻で学んでいて、2019年の秋に卒業後、ミニアルバムの制作に取り組んでいるそう。これは完成したら欲しいぞ!
11:CYANIDE「eye contact」
これはタイでシェアNo.1と言われるストリーミングサービス「JOXX」からプレイリストの形で発表された「THROWBACK THE 90s」というアルバムの中の1曲。こういう曲90年代にありましたね~。記憶が霞んでて「誰それのあの曲みたいな」って言えないけど。JOXXは日本ではサービスエリア外ですが、僕はタイに行った時向こうでアプリをダウンロードしてきたら日本で使えています。JOXXについてもっと知りたい方はANNGLEさんの記事へ。
12:Faye Fang Kaew「Love Track」
先ほどの90年代をはじめ、タイでは年代問わずのリバイバルブームが起きていますが、とうとう2007年のデビューから約9年間タイ・ガールポップ界を牽引し続けたFaye Fang Kaew(FFK)が5年の沈黙を破って復活しちゃいました。あービックリした。これはKamikazeレーベル時代の恩師とも言えるプロデューサー(独立して自分のレーベルを設立)が手掛けた、まさに全盛期のレパートリーを思い出させる1曲。美貌も歌声も全く衰えてません。
13:ALLY「How To Love (feat.GRAY)」
そしてBNK48以降日本式アイドルが100グループ程結成された(本当の話です)反動で、今度は「やっぱK-POP最高!カワイイよりセクシー!」というムーブメントも起こっているわけです。こちらは韓国の大物ラッパー/プロデューサーのGRAYを迎えた新人ALLYちゃんのデビュー曲。調べたけど情報があんまり出てこない。年いくつなんだ?この見た目でセクシー系から始めちゃっていいのか?ともかくバックダンサーとのピシッと揃ったダンスはまさしくK-POP直系ですね。(年齢判明。このMV撮影時まだ15才ですって)
14:Twopee x Gym And Swim「Closer」
リスト前半にはあえて寂しい曲を置きましたが、最後は明るく締めましょう。とうとうWHOがパンデミックを宣言して世界中が緊迫感に包まれていても、収束の日はいつか必ずやって来て、またこうしてロンドン旅行ができる時もやって来ます。僕だって小学生の頃からのビートルズファンですから、いつかアビイ・ロードをこうやって渡るまで死ぬわけにはいきません。それにしても主演の女の子はキュートだ。カバーバージョンで、元曲はScrubb。
以上、「自宅で1時間過ごすためのタイポップス」を14曲お届けしました。同じようなニュースばかりTVで見ちゃって塞ぎがちな気分が少しだけ晴れますように。そしていつかまたきっとライブハウスで音楽浴びたり、沢山外食したり、ハグで挨拶したりしましょうね!
各曲解説付きでお送りしてまいりましたが、流しっぱなしにしておきたい方はこちらのYouTubeとSpotifyのプレイリストをどうぞ。
※記事中のCYANIDEの曲はJOXX限定配信曲のためSpotifyのプレイリストに含まれていません。
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